Wakamats〜公開シンポジウム ― Public Symposium



講演資料の公開

このシンポジウムの主催者は2002年から3年間、JST社会技術研究事業で助成されているプロジェクトであり、科学技術政策形成を支援する「開かれた」システムを提言することを目標として活動してきた。

ここに、海外から3人のプラクティショナーを招いて、公開シンポジウムを開催した。この「プラクティショナー」というカタカナ言葉には、何人かの方々から、どういう意味かというお尋ねをいただいた。この言葉は、英語で、ふつう開業医や弁護士などを意味するが、ここで、この言葉を使ったのは、「実践者」という意味を強調したかったからである。開催趣旨で述べたように、「参加型手法・制度に関する知識だけでなく、実際に運用してきた経験と智恵」をもっている人という意味を込めたのである。

日本では、テクノロジー・アセスメント(TA)、まして参加型テクノロジー・アセスメント(pTA)は、それに向けた動きが始まったばかりであり、理論的検討はともかく、その経験の蓄積は、これもまた始まったばかりである。私たちのプロジェクトは、「社会技術研究」の一環として助成されているものであるが、いわゆる「理論的」、「実証的」研究を超えて、現実のシステム変更を具体的に提言することを目標としている。どこまで具体的に提言できるかは、このプロジェクトの大きな課題であるが、この目標に向かって、本シンポジウムでは、現実の場面で、TA、pTAを「プラクティス」(実践)している人々を招き、その経験に裏打ちされた講演をいただき、研究をまとめるための助言とすることとした。このシンポジウムは、本プロジェクトの研究を進めるための研究集会(ワークショップ)の一部として開催したものであるが、これを公開したのは、これだけ、まとまった形で欧米の経験を聞く機会はめったに得られないものであり、TA、pTAなどに興味・関心を持つ人々にとっても、貴重な機会となると考えたからである。

これまで、TA、pTAというキーワードを使ってきたが、クレイトン氏の講演にあったように、アメリカでのこの分野の活動は、このキーワードで探すことはほとんどできない。合意形成(コンセンサス・ビルディング)、紛争解決(ディスピュート・レゾリューション)など、違ったラベルが貼られている。一方、ヨーロッパでは、TA、pTAというキーワードが用いられている。なお、私たちのプロジェクトでは、TA、pTAだけではなく、科学技術政策形成への「参加」において考えられる多様な側面を研究の対象としており、TA、pTAのような課題解決型だけでなく、例えば、需要に基づいた政策目標の形成という場面をも取り入れようとしている。

このシンポジウムの広報は、さまざまな制約から、ネットなどで行っただけであるが、幸いにも、講演者、プロジェクト関係者を含め、60人を超す参加者を得ることができた。参加者からは、3氏が講演で使った資料を是非見たいという強い要望を受けた。ここに、3氏の了解を得て、その資料を公開する。多くの方々の参考となることを願っている。

2004年7月
研究代表者:若松征男